団十郎

朝顔の種である。
昨年、通りすがりのおばあちゃまが「これはね、団十郎という種類なの。持って帰って種を播くわ～。」と、しこたま摘み取った朝顔を抱えて教えてくれた。
摘んでもすぐ朝顔はしおれてしまう、まして種など付いておらぬのに......季節感のない服装のおばあちゃま、もしやあなたは認知症+徘徊中？

すぐ会社で調べた、行方不明の高齢者を.......ってのは嘘、調べたのは『団十郎』。
確かにおばあちゃまが抱えていたのは団十郎、私には小豆色に思えたが世間一般には茶色で通っている朝顔のことだ。
なんかむらむら興味が湧いて、絶対来年は自宅でこの朝顔を咲かせてみようと決めた。

そもこの団十郎、なぜか公民館の空き地に勝手に自生していて野放し状態、とても誰かが意図して植えたとは思えず、ならば種が出来たら好きに頂いてよかろうと。それから２か月、種はまだかと折をみては様子を見に通った。そうこうするうち、シルバー人材のおばちゃん達が現れて建物周辺の雑草を刈り始めたんだが、まさか団十郎を除けたりしないだろう、まだ咲いてるし..............と一抹の不安を覚えつつ見守っていたのだが。
なんとおばちゃん達ったら、団十郎の横に茂っていたアブチロン（チロリアンランプ）をぶっこ抜きおった！こりゃなんちゅー趣のわからん奴等、このままでは絶対に団十郎も根こそぎやられてしまうに違いない、今のうちに少しでも出来ている種を摘んでおかねば.........って、まだ青い種をそそくさと刈り取ったのだ。
案の定、翌日にはもう団十郎はもぬけのから、菊だけがひっそりと残されいてた。
ふ、おばちゃん達よ、菊だけは馴染みが深いから残しておいたか（毎日仏壇に供えているに違いない）。危険を察知して摘んでおいて良かった、団十郎の子孫。

ここまで書いてきて何を意地になっているんだろう？と我に還った、でもまあいいや、そんだけ団十郎に魅せられたのさ。

もう少し暖かくなったら、土に蒔いてみよう。
完熟した種ではないので発芽するかどうか定かでない、でも久しぶりにすっごくわくわくする。